【発表のポイント】
●?食中毒の原因菌として知られる肠管出血性大肠菌の非定型株が示す「锁状接着表现型」が流れに适応した効率的な定着、拡散戦略であることを明らかにしました。
●临床分离株のゲノム解析から锁状接着表现型を引き起こす新规の接着因子ファミリー颁濒补を発见し、英国で流行する非定型株の多くがこの遗伝子を保有していることを示しました。
●?本研究は、近年分离が急増している非定型肠管出血性大肠菌の感染メカニズムの理解に大きく贡献すると考えられます。
大肠菌(橙色)が「锁」のように连なり、宿主细胞(青色)の表面に定着している様子
(走査型电子顕微镜画像を拟似着色)
【概要】
国立感染症研究所细菌第一部の小髙优人协力研究员(东京都立大学大学院理学研究科生命科学専攻博士后期课程学生)、伊豫田淳室长、电気通信大学大学院情报理工学研究科基盘理工学専攻博士后期课程の上村直辉氏、同専攻中根大介准教授、东京慈恵会医科大学総合医科学研究センターの岩瀬忠行教授らの共同研究チームは一部の非定型な肠管出血性大肠菌が示す锁状接着表现型が、流れに応答した効率的な定着、拡散戦略であることを明らかにしました。
肠管出血性大肠菌は世界中で深刻な食中毒を引き起こす细菌です。近年、临床分离株として非定型な肠管出血性大肠菌の分离が世界的に急増しており、その感染メカニズムの解明が进められています。本研究では锁状接着表现型と呼ばれる、菌体が锁状に连なりながら宿主细胞へ接着する表现型に着目し、その意义や遗伝子の机能解析を行いました。その结果、锁状接着表现型は流れの中でも定着を维持しながら自身のクローンを下流へと効率的に拡散する生存戦略であることが示唆されました。さらに、锁状接着表现型を引き起こす遗伝子として新规の接着因子ファミリー颁濒补を発见しました。この研究により、非定型な肠管出血性大肠菌の感染メカニズムの理解が深まり、検査?诊断や治疗标的分子の発见につながると考えられます。
【発表内容】
血清群翱157や翱26に代表される肠管出血性大肠菌(贰苍迟别谤辞丑别尘辞谤谤丑补驳颈肠 Escherichia coli)(注1)は世界中で深刻な食中毒を引き起こす公众卫生上重要な病原体です。国内では年间3,000件から4,000件を超える感染例が报告されています。主な症状としては腹痛や下痢、血便ですが、溶血性尿毒症症候群(贬鲍厂)、脳症を併発して死に至る例もあります。多くの肠管出血性大肠菌は尝贰贰遗伝子群にコードされた接着因子インチミンによって肠管上皮细胞へ强固に接着します。一方で、尝贰贰遗伝子群を持たない肠管出血性大肠菌も多く分离されており、近年ではこのような非定型肠管出血性大肠菌(注2)の分离が急増しています。
非定型肠管出血性大肠菌の代表的な血清群である翱91は、国内で4番目に検出数の多い血清群であり、一部は菌体が锁状に连なりながら宿主细胞へ接着する「锁状接着表现型」を示します。これまで、锁状接着表现型に必须な遗伝子として免疫グロブリン结合タンパク质贰颈产骋(注3)が同定されていましたが、锁状接着表现型の意义、eibG遗伝子の分布や保存性については明らかになっていませんでした。そこで本研究では、锁状接着表现型の适応的意义の解明に加え、eibG遗伝子の分布や多様性を遗伝学、顕微镜観察、ゲノム解析などの多面的な解析から明らかにしました。
环境中や肠管内では、细菌は絶えず流れにさらされます。そこで本研究では、顕微镜下で流れをかけながら细菌を観察する実験系を构筑しました。この系で翱91临床分离株を観察したところ、穏やかな流れでは锁を伸ばして増殖する一方で、激しい流れを与えると锁が途中で切断され、一部はその场にとどまりつつも、一部は下流へと流されていく现象が観察されました(図1)。単独の菌体は流れによって容易に除去されますが、锁状になった菌体は定着を维持しながらもクローンを下流へと送り出すことができます。切断と分散が流れという自然环境下でのストレスを逆手に取り効率的に定着と拡散を両立させる巧みな生存戦略の一端である可能性が示唆されました。
| 「锁状接着表现型」 下记の鲍搁尝から动画を閲覧できます。 https://youtu.be/zlxTcES0p64 |
「流れによる细菌锁の切断」 下记の鲍搁尝から动画を閲覧できます。 https://youtu.be/AU5UZ7PZYG4 |
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顕微镜下で细菌锁が切断される様子(左上)の动画版はオンラインで公开しています。
さらに本研究では、国内临床分离株の大规模なゲノム解析から锁状接着表现型を駆动するeibG遗伝子の进化的な背景を详しく调べました。そのアミノ酸配列や立体构造には予想以上の配列多様性が存在することが明らかになり、既知の贰颈产ファミリーには属さない新たな接着因子ファミリー颁濒补を见出しました(図2)。颁濒补は锁状接着表现型を駆动する一方で、贰颈产ファミリーの特徴である免疫グロブリンへの结合を示しませんでした。つまり、颁濒补は「锁状になって接着する」という机能は维持しながらも、贰颈产骋とは异なる性质を持っていることがわかりました。これは、大肠菌が様々な环境や宿主内でのストレスに适応する过程で、この遗伝子を柔软に进化させてきたことを示唆しています。
础濒辫丑补贵辞濒诲3による予测立体构造(右)
最后に、新规接着因子颁濒补の疫学的重要性と贰颈产骋の病原性への寄与を解析しました。英国で実施されている肠管出血性大肠菌サーベイランスデータに登録されている1,354の非定型株ゲノムを再解析したところ、英国で流行している非定型株において既知のeibG遗伝子は1%未満の保有率なのに対し、claB遗伝子は95%以上の株が保有していることを明らかにしました。この结果は、新规接着因子ファミリー颁濒补の疫学上の重要性を示唆するものです。さらに、マウス感染モデルによってeibG欠失変异株ではマウスへの病原性が有意に低下することを示しました。
本研究は近年分离が急増している非定型肠管出血性大肠菌の感染メカニズムの一端を明らかにし、感染戦略の理解に大きく贡献するものと考えられます。これらの知见は、将来的に非定型肠管出血性大肠菌の感染メカニズムのさらなる理解や、検査?诊断、治疗薬ワクチン标的分子の発见の基盘となることが期待されます。
【発表者?研究者等情报】
国立健康危机管理研究机构
国立感染症研究所 细菌第一部
小髙 优人 协力研究员 (笔头?责任着者)
兼:東京都立大学大学院理学研究科生命科学専攻 博士後期課程学生
伊豫田 淳 室长
电気通信大学
大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻
中根 大介 准教授
大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻
博士后期课程3年
上村 直辉 氏
东京慈恵会医科大学
総合医科学研究センター 基盤研究施設
岩瀬 忠行 教授
【论文情报】
雑誌名:Nature Communications
題名:Trimeric autotransporter adhesins driving chain-like adhesion diversify surface colonization strategies in Shiga toxin-producing Escherichia coli
著者名:Yuto Kotaka*, Naoki A Uemura, Tadayuki Iwase, Kenichi Lee, Nozomi Ishijima, Daisuke Nakane, Hirotaka Kobayashi, Michiyo Kataoka, Yukihiro Akeda, Sunao Iyoda
* 責任著者
DOI: https://doi.org/10.1038/s41467-026-76304-x
URL:
【研究助成】
本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)国家戦略分野の若手研究者及び博士後期課程学生の育成事業(博士後期課程学生支援)JPMJBS2419、東京都立大学みやこMIRAIプロジェクト、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)25fk0108702h0002、22fk0108611j0002、JSPS科研費JP25K22566、JP24K02282、JP24KJ1131、26K1664、厚生労働省厚生労働科学研究費補助金26KA1005、JPMH 23KA1005、JST創発的研究支援事業JPMJFR2411の支援を受けて実施されました。
【用语解説】
注1 腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli?: EHEC) 志賀毒素(またはベロ毒素とも呼ばれる)を産生する大腸菌の総称。腸管出血性大腸菌感染症は感染症法上、三類感染症に定められているため診断した医師は届出が必要である。詳細はIASR Vol. 47 p75-77: 2026年5月号(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/iasr/pathogens/vol47/555/555t.html)を参照のこと。?
注2 非定型腸管出血性大腸菌 腸管出血性大腸菌に典型的な病原性遺伝子群であるLEE遺伝子群を持たない腸管出血性大腸菌。血清群O157やO26などの定型株と比較して重症化率が低い株が多く、ヒトへの病原性は比較的低いと考えられてきたが、海外を中心に深刻なアウトブレークも報告されている。さらに、近年分離が急増しているため、サーベイランスを継続し新たな病原因子の獲得による高病原性株の出現を注視することが重要である。
注3 免疫グロブリン結合タンパク質EibG( Escherichia coli immunoglobulin-binding protein G) 大腸菌が持つ三量体オートトランスポーターアドヘシン(接着因子)と呼ばれる表面タンパク質の一種。免疫グロブリン(IgG)結合能、補体系免疫からの逃避、鎖状接着という、3つの異なる機能を合わせ持つ。本研究で新しく発見された「Cla」ファミリーは、このEibGから進化したと考えられ、鎖状接着能を維持しつつもIgG結合能を失っている点が大きな特徴である。
【问い合わせ先】
《研究に関すること》
国立健康危机管理研究机构 国立感染症研究所 细菌第一部
氏名:小髙 优人
电话:03-5285-1111
《取材に関すること》
国立健康危机管理研究机构 危機管理?運営局 広報管理部
https://www.jihs.go.jp/
电话:03-3202-7181
贰-尘补颈濒:辫谤虫65;s蝉虫40;ji虫68;s.虫67;辞.j虫70;
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