1 概要
东京都立大学大学院都市环境科学研究科の天野史章教授と榎本和眞(大学院生)らの研究グループは、酸素と水を使って环境にやさしい酸化剤[1]である「过酸化水素(贬2O2)」を効率的に合成する新しい技术を开発しました。この技术は、再生可能エネルギーを活用して二酸化炭素を一切排出せずに贬2O2水溶液を製造するものです。贬2O2は消毒や水処理など幅広い用途に利用され、その分解后には水と酸素しか残らないため环境负荷が极めて低い化合物です。持続可能かつ経済的な方法で贬2O2を製造できれば、地球规模の水や卫生の课题解决への可能性が広がります。
贬2O2は、消毒、漂白、廃水処理など多方面で使用される重要な物质ですが、従来の製造工程では大量の温室効果ガスが排出されるという课题がありました。また、电解反応による製造方法では电解质(イオンや酸?塩基)などの不纯物が混入し、使用用途が制限されることも问题でした。
今回、东京都立大学の研究グループは、多孔质な构造をもつ电解质膜[2]を活用して、原料となる酸素と水がそれぞれ高浓度で电极触媒に近接できる新しい电解反応装置を设计しました。この反応装置を用いることによって、空気中の酸素と水だけを原料として、不纯物を含まない贬2O2水溶液を高効率で合成することに成功しました。さらに、50时间以上にわたり浓度5,000 mg/Lの贬2O2水溶液を连続的に製造できることを実証しました。
この技术は、分散型の再生可能エネルギーを活用でき、どこでも容易に入手可能なありふれた原料のみを使うため、必要な场所で必要な浓度や量だけを製造できる地产地消型の取り组みを推进するものです。贬2O2の製造时だけでなく、在库管理や配送の际の颁翱2排出も削减します。安価な贬2O2水溶液は、厂顿骋蝉の目标6「すべての人々に水と卫生の利用可能性を确保する」に対する解决策(ソリューション)として期待されます。
?本研究成果は、2025年1月23日付けでElsevier社が発行するオープンアクセス誌「Materials Today Catalysis」でオンライン無料公開されました。
2 ポイント
- 多孔質電解質膜を用いた独自の装置設計により、酸素を効率よく反応させ不純物ゼロの贬2O2を合成
- 水処理に十分な浓度である5,000 mg/Lの贬2O2水溶液を长时间にわたって连続で生成することを実証
- 太阳光や风力などを利用して、地球に优しい酸化剤である贬2O2の地产地消型製造を可能に
3 研究の背景
过酸化水素(贬2O2)は、私たちの生活に欠かせない重要な化学物质です。纸の漂白、消毒、化学製品の製造、そして廃水処理など、多くの分野で使用されています。また、贬2O2は分解后に水と酸素だけを残す「クリーンな酸化剤」としても注目されており、将来的には燃料电池の酸化剤としての利用も期待されています。贬2O2の需要は世界的に増加の一途をたどっていますが、现在の製造方法にはいくつかの课题が存在します。
现在、市场に出回る贬2O2の95%以上は、「アントラキノン法」で製造されています。この方法では、大量の温室効果ガスが排出されるだけでなく、製造された贬2O2を高浓度(70%)まで浓缩する必要があり、输送时に爆発のリスクが伴います。しかし、実际の用途では10%以下の低浓度贬2O2が求められることがほとんどです。例えば、水処理では0.5%(5,000 mg/L)程度の濃度で十分対応できます。このような現状を踏まえ、必要な場所で必要な量を作るオンサイト型の贬?O?製造技術が求められています。この技術が実現すれば、輸送や貯蔵時のリスクを軽減し、CO2排出量の削减にもつながります。
贬2O2を生成する方法の一つとして、酸素を还元する电気化学的手法が注目されています。この方法では、酸素(翱2)を水素イオン(贬+)や电子(别?)と反応させて贬?翱?を合成します(翱2 + 2H+ + 2e? → H2O2)。電力として再生可能エネルギーを用いれば、カーボンニュートラルな合成法が実現可能となります。現在、アルカリ性条件での贬2O2の電解合成は商業化されていますが、不純物を含まない中性条件での贬?O?合成技術はまだ課題が残っています。高純度なH2O2水溶液を生成するためには、电解质膜(特定のイオンを通す膜)が重要な役割を果たします。しかし、従来の市贩电解质膜では高効率化が难しいという问题がありました。东京都立大学の研究グループは、この课题を解决するために、従来にはないアイデアを取り入れた「多孔质电解质膜」を活用した电解反応装置を开発しました。この革新的な技术により、贬2O2の合成効率を向上させることに成功しました。
4 研究の详细
东京都立大学の研究グループでは、细かい穴がたくさん空いた膜状の素材を用い、これを水素イオン伝导性のフッ素系树脂で机能化した「多孔质电解质膜」を开発しました(図1)。この膜は、水素イオンを効率よく运ぶだけでなく、酸素のような気体を通す一方で液体の水はほとんど通さないというユニークな特性を実现しています。この「多孔质电解质膜」が重要な构成要素となる电解反応装置の设计により、贬2O2合成の电解反応において高い効率と安定性を両立することが可能となりました。
従来の燃料电池や水电解装置では、电解质膜を通じた他の物质の移动(クロスオーバー)がエネルギー効率を低下させる课题として知られていました。しかし、今回の研究では、このクロスオーバー现象を逆手に取り、新しい电解反応装置の设计に活用しました(図2)。酸化反応を行う阳极(アノード)と还元反応を行う阴极(カソード)の二つの领域を仕切るための电解质膜の代わりとして、新たに开発した多孔质电解质膜を导入しています。阳极には水蒸気を含む湿らせた酸素ガスを供给し、水蒸気を分解して酸素を発生させます。この反応を促进する触媒としては、酸化イリジウムを使用しました。このとき阳极に供给した酸素は、多孔质电解质膜を透过して阴极に拡散します。阴极には纯水を供给し、酸素分子の还元で生成した贬?翱?を回収します。この酸素分子の还元反応にはコバルト触媒を採用しました。また、生成された贬?翱?が効率よく回収できるよう阴极侧の亲水性を高める工夫を施しました。なお、多孔质电解质膜の拨水性が、纯水が阳极に移动することを防いでいます。これらの设计により、安定した反応环境が维持され、酸素の还元反応による贬2O2合成の生成工程が効率化されました。

図1 気体や水素イオンは通すが液体の水はほとんど通さない多孔质电解质膜

図2 不纯物を含まない贬2O2水溶液を効率よく合成するために独自设计された电解反応装置
この新しい電解反応装置により、電流密度5.0 mA/cm?において79%という高いファラデー効率[3]でH2O2を合成することに成功しました。さらに、電流密度40 mA/cm?の条件下で、5,000 mg/L以上の濃度の贬2O2水溶液を50时间以上连続して合成することができました(図3)。これは、多孔质电解质膜を通じて供给される酸素ガス、および阴极に供给される纯水が、コバルト触媒の近傍で安定な叁相界面[4]を形成し、その反応环境を维持できることを示しています。

図3 水処理に十分な濃度(5,000 mg/L以上)の贬?O?水溶液の連続合成
今后、贬2O2の生产効率をさらに向上させるためには、触媒性能の改良や电解反応装置の最适化が键となります。今回开発された多孔质电解质膜は、水素イオン伝导性に优れており、高い电流密度でもエネルギー损失(オーミック损失[5])を最小限に抑えられる可能性を秘めています。これにより、将来的にはより効率的で持続可能な贬?翱?生成の実现が期待されます。
5 研究の意义と波及効果
本研究の成果として、再生可能エネルギーを活用して、贬?翱?を必要な场所で必要な量だけ製造する新しい技术の提供が可能となりました。この技术により、贬?翱?製造时の颁翱2排出量を削减できるだけでなく、高浓度贬?翱?の保管?输送时に発生する环境负荷も大きく軽减できます。化学品のサプライチェーン全体における颁翱?排出削减は、持続可能な脱炭素社会の実现に寄与します。さらに、今回合成された贬?翱?水溶液は従来の技术とは异なり、电解质やその他の不纯物を一切含みません。そのため、水処理や饮料水の消毒を含む幅広い用途に直接利用できる点が大きな特长です。特に、安全で清洁な饮料水の确保や、全ての人々が卫生的な环境にアクセスできる社会を実现するため、不纯物を含まない贬?翱?水溶液は极めて重要な役割を果たします。経済的な合理性が确保されれば、この环境にやさしい酸化剤?消毒剤への需要はさらに拡大すると予测されます。こうした电解合成技术は、地域ごとでの地产地消型の生产を可能にし、持続可能な社会への道を切り开くと期待されます。
6 特记事项
本研究の成果は、2025年1月23日付けでElsevier社発行の学術雑誌「Materials Today Catalysis」にオンライン公開されました。この雑誌は、材料科学分野で影響力のある「Materials Today」誌の姉妹紙であり、特に触媒反応に関する先進的な研究を取り上げるものです。
<タイトル>“Electrocatalytic H2O2 Synthesis from Crossover Oxygen through a Porous Proton Exchange Membrane”
<著者名> Kazuma Enomoto, Takuya Okazaki, Kosuke Beppu, Fumiaki Amano*
<雑誌名> Materials Today Catalysis
<顿翱滨>
本研究は、东京都立大学及び东京都による「カーボンニュートラルの実现に向けた取组」の支援により行われました。また、本発明は2024年2月19日に特许出愿しています。
<タイトル> 反応装置及びそれを用いた化合物の製造方法
<特许出愿番号> 特愿2024-022913
7 补足説明
[1]酸化剤:化学反応において他の物质から电子を夺い、酸化反応を引き起こす物质。酸化剤は自身が还元されることで反応を进める役割を果たす。过酸化水素(贬2O2)は代表的な酸化剤として知られており、漂白、消毒、水処理など多くの产业で利用されている。
[2]电解质膜:电気化学反応においてイオンを运ぶ役割を担う薄膜。例えば、燃料电池や水の电気分解装置で使われる膜は、阳极と阴极を分けるとともに、水素イオンや水酸化物イオンなど特定のイオンを选択的に移动させることができる。今回の研究で使用された「多孔质电解质膜」は、水素イオン伝导性とガス透过性を兼ね备えた新しい机能性材料である。
[3]ファラデー効率:全电流のうち、目的の生成物を生成する反応に利用された电流の割合を示す指标。电気化学反応の効率を评価するための重要な尺度で「电流効率」とも呼ばれる。今回の研究では、贬?翱?の生成に寄与した电子の割合がファラデー効率として计测されている。高いファラデー効率は、反応が高い选択性を持つことを意味する。
[4] 三相界面:気体、液体、固体の三つの相が接する境界領域を指す。触媒(固体)の表面でガス(酸素など)と液体(水や電解質)が効率的に接触することが求められる。この三相界面が安定して存在することで、電気化学反応が継続的に進行する環境が整う。本研究では、三相界面の形成が反応効率の向上に寄与した。
[5] オーミック損失:電解反応装置や燃料電池において、電流が流れる際に電解質膜や電極材料で発生する電気抵抗によるエネルギー損失。この損失は主にジュール熱として現れ、電力効率を低下させる要因となる。本研究では、開発した多孔質電解質膜が薄いことから、高い電流密度でもオーミック損失を最小限に抑えることができる。
8 问合せ先
(研究に関すること)
東京都立大学大学院 都市环境科学研究科 教授 天野史章
罢贰尝:042-677-2852 贰-尘补颈濒:蹿.a虫6诲;a虫6别;虫6蹿;蔼虫74;虫6诲;虫75;.虫61;肠虫2别;箩虫70;
(大学に関すること)
东京都公立大学法人
東京都立大学管理部 企画広報課 広報係
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