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【研究発表】三種の光を感知する新しい光受容体を発見 -海洋に広く生息する微細藻の光環境への適応-

报道発表

 理化学研究所(理研)环境资源科学研究センター合成ゲノミクス研究グループの松井南グループディレクター、蒔田由布子上级研究员、嶋田势津子研究员、国立环境研究所生物多様性领域の河地正伸室长、山口晴代主任研究员、铃木重胜特别研究员(研究当时)、静冈大学大学院理学研究科の成川礼讲师(研究当时、现所属:东京都立大学准教授)、伏见圭司特任助教(研究当时)、水产研究?教育机构水产技术研究所の渡辺刚研究员(研究当时)、东京大学大学院农学生命科学研究科の吉武和敏助教、お茶の水女子大学の作田正明教授らの共同研究グループ※は、2012年から2014年にかけて东北地方の沿岸?冲合域で得られた海洋モニタリングメタゲノムデータを利用し、海洋に広く分布する微细藻から叁种の光を感知する新规の光受容体[1]を発见しました。
 本研究成果は、海洋における微细藻类の光受容メカニズムと光受容体の进化の解明に贡献することが期待されます。
 微细藻类の多くは、その生存のために光の利用が不可欠です。太阳光の成分のうち、青色光は海深くまで届きますが、赤色光は届きません。そのため、种々の深さに生息する海洋の微细藻类にとって、さまざまな波长の光を感知する光受容体が重要です。
 共同研究グループは、海洋メタゲノム[2]データを用いて青色光受容体のクリプトクロム[1]遗伝子配列を探索子として解析しました。そして、クリプトクロムと高等植物における赤色光受容体のフィトクロム[1]が融合した遗伝子を発见し、この遗伝子由来のタンパク质「デュアルクロム」と名付けました。デュアルクロムは、青色光、橙色光、远赤色光を感知でき、海洋浮游性微细藻类のプラシノ藻[3]の一种であるピクノコッカス[3]とその近縁种だけが保有していることが分かりました。さらに、ピクノコッカスのゲノム配列を完全解読し、ピクノコッカスが海洋中で光のほとんど届かない有光层下部から海洋表层までの多様な光环境に适応してきた理由の一端を明らかにしました。
 本研究は、オンライン科学雑誌『Nature Communications』(6月16日付:日本時間6月16日)に掲載されます。

海洋浮游性のプラシノ藻の一种ピクノコッカス
海洋浮游性のプラシノ藻の一种ピクノコッカス

※共同研究グループ

理化学研究所 环境资源科学研究センター 合成ゲノミクス研究グループ
 グループディレクター  松井 南  (まつい みなみ)
 上级研究员       蒔田 由布子(まきた ゆうこ)
 上级研究员       栗原 志夫 (くりはら ゆきお)
 研究员         嶋田 势津子(しまだ せつこ)
 研究员         栗原 恵美子(くりはら えみこ)
 研究员         滨崎 英史 (はまさき ひでふみ)
 テクニカルスタッフⅠ  栗山 朋子 (くりやま ともこ)
 研究生(研究当时)   陶久 あや (すえひさ あや)
国立环境研究所 生物多様性领域 生物多様性资源保全研究推进室
 室长          河地 正伸 (かわち まさのぶ)
 主任研究员       山口 晴代 (やまぐち はるよ)
 特别研究员(研究当时) 铃木 重胜 (すずき しげかつ)
静冈大学 大学院理学研究科
 讲师(研究当时)    成川 礼  (なりかわ れい)
 (现所属:东京都立大学 理学部生命科学科 准教授)
 特任助教(研究当时)  伏见 圭司 (ふしみ けいじ)
水产研究?教育机构 水产技术研究所
 室长(研究当时)    坂见 知子 (さかみ ともこ)
 研究员(研究当时)   渡辺 刚  (わたなべ つよし)
サウジアラビア?アブドラ王立科学技术大学
 特别栄誉教授      五条堀 孝 (ごじょうぼり たかし)
东京大学 大学院农学生命科学研究科
 助教          吉武 和敏 (よしたけ かずとし)
お茶の水女子大学 理学部生物学科
 教授(研究当时)    作田 正明 (さくた まさあき)
 学生(研究当时)    平田 爱実 (ひらた まなみ)

研究支援

 本研究は、理研?水産研究?教育機構の共同研究として開始され、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金挑戦的研究(萌芽)「海洋メタゲノム解析により単離された新型キメラ光受容体PHYCRYの機能解析(代表者:嶋田勢津子)」による支援も一部受けて行われました。また、全ゲノム配列を決定したPycnococcus provasolii NIES-2893は、ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)リソース拠点「藻類」である国立環境研究所から提供されました。

1.背景

 海水は、400~700ナノメートル(nm、1nmは10 億分の1メートル)の波長の光のうち、長波長の赤色光(620~700nm)はあまり通さず、短波長の青色光(450~500nm)を深部まで通す性質があります。そのため、種々の深さに生息する海洋藻類にとって青色光の利用が重要です。光受容体は特定の波長の光を吸収することで光を感知します。そのうち、青色光の光受容体であるクリプトクロムは、微生物から哺乳類、植物まで幅広い生物が保有していますが、海洋性の微生物が持つクリプトクロムについての知見は限られていました。
 そこで共同研究グループは、クリプトクロムに注目し、新しいクリプトクロム様遗伝子を探しました。探索には2012年から约4年间、仙台湾と北海道?东北冲で実施された海洋モニタリングによって集められたデータの一部を利用しました。この海洋モニタリングは、东日本大震灾后、东北沿岸域の生物多様性评価と环境予测法の开発を目的とした研究プロジェクトとして実施され、海洋环境データとともに、どのような微生物が生息しているのかを调べるため、海洋メタゲノムデータを収集していました。メタゲノムデータでは、サンプル中の微生物を培养する必要がないため、难培养性微生物など、これまで知られていなかった新规の顿狈础配列を决定できます。また得られた顿狈础配列情报からは、サンプル中に存在する微生物の种类や量を知ることもできます。

2.研究手法と成果 

 共同研究グループは、海洋メタゲノムデータの中から青色光の光受容体であるクリプトクロムの遺伝子を探した結果、クリプトクロムと赤色光の光受容体であるフィトクロムが融合した光受容体の遺伝子を発見し、「デュアルクロム」と名付けました。また、デュアルクロムは、プラシノ藻の一种であるピクノコッカスの遺伝子であることも分かりました。
 そこで、デュアルクロム遺伝子の機能を明らかにするために、まず融合した遺伝子がコードするタンパク質の吸収波長を調べました(下図)。その結果、前半のフィトクロム部分では赤色光より少し短い波長の橙色光(590~620nm)を吸収しました。陸上植物のフィトクロムでは、赤色光で活性化され、遠赤色光(700~800 nmまたはそれ以上)で不活性化される可逆性が知られていますが、ピクノコッカスでは橙色光/遠赤色光による可逆性が確認できました。一方、後半のクリプトクロム部分においては、青色光を吸収することを確認しました。

図 デュアルクロムの機能ドメイン構造と吸光度
図 デュアルクロムの機能ドメイン構造と吸光度
左侧のフィトクロム领域では、橙色光を吸収すると远赤色光吸収型へ、远赤色光を吸収すると、橙色光吸収型へ変换する、橙色-远赤色光可逆的反応を示した。また右侧のクリプトクロム领域では、暗状态では青色光を吸収し、青色光照射により紫外光吸収型へと変换する。

 ピクノコッカスは海産の単細胞性藻類で、光の強い海洋表層だけでなく、あまり光が届かない水深でも生息することができます。ピクノコッカスの培養株であるP. provasolii NIES-2893の完全ゲノム配列を決定したところ、デュアルクロム以外の光受容体遺伝子や、強光や弱光に適応するための遺伝子の存在も明らかになりました。これらの遺伝子のおかげで、ピクノコッカスは海水中の多彩な光環境に適応できたと考えられます。
 このように、ピクノコッカスでは、别々の光受容体のフィトクロムとクリプトクロムの遗伝子が融合し、一つの光受容体として协调的に働くことで、広い海洋环境にてより确かな光受容を可能にする能力を生み出していることが推察されます。

3.今后の期待 

 本研究では、橙色光、远赤色光、青色光という3种类の光を认识できる光受容体の遗伝子を初めて発见しました。この光受容体は、ピクノコッカスが海洋环境で増殖する上で重要な役割を果たしていると考えられます。ピクノコッカスを含む浮游性微细藻类は、海洋における二酸化炭素(颁翱2)固定に重要な役割を果たしており、本成果は今后の颁翱2固定の研究开発に寄与するものと期待できます。
また、デュアルクロムは光受容体の进化を解明する上で重要な遗伝子の一つであると考えられることから、本研究により、新しい机能を持つタンパク质の探索において、海洋の微细藻类やそのゲノム情报の有用性を示すことができました。
 さらに、本成果は、国际连合が2016年に定めた17项目の「持続可能な开発目标(厂顿骋蝉)[4]」のうち、「13. 気候変動に具体的な対策を」および「14. 海の豊かさを守ろう」に貢献するものです。

4.论文情报

<タイトル>
Identification of a dual orange/far-red and blue light photoreceptor from an oceanic green picoplankton
<着者名>
Yuko Makita*, Shigekatu Suzuki*, Keiji Fushimi*, Setsuko Shimada*, Aya Suehisa, Manami Hirata, Tomoko Kuriyama, Yukio Kurihara, Hidefumi Hamasaki, Emiko Okubo-Kurihara, Kazutoshi Yoshitake, Tsuyoshi Watanabe, Masaaki Sakuta, Takashi Gojobori, Tomoko Sakami, Rei Narikawa, Haruyo Yamaguchi, Masanobu Kawachi, Minami Matsui
*共同第一着者
<雑誌>
Nature Communications
<顿翱滨>
10.1038/s41467-021-23741-5

5.补足説明

[1] 光受容体、クリプトクロム、フィトクロム
さまざまな生物が持つ色素団を结合したタンパク质であり、特定の波长や强度の光を吸収する。例えば、高等植物では、フィトクロムは赤色光~远赤色光を、クリプトクロムは紫色光~青色光を感知する。

[2] メタゲノム
环境サンプルから多様な微生物が混在した状况でゲノム顿狈础を调製し、配列を决定したゲノムデータのこと。従来のゲノム解析では、単一の菌株を分离、培养する必要があったが、メタゲノムは、难培养性の生物も含めた全てのゲノム顿狈础配列を决定できる。海洋に限らず多様な环境においてデータが蓄积されている。

[3] プラシノ藻、ピクノコッカス
プラシノ藻は、原始的な形質を持った緑藻植物門に含まれる微細藻類である。生活環を通して単細胞性であり、直径は1 μm未満から数 μmと非常に小さいものが多い。本研究に用いたピクノコッカスは、海洋性のプラシノ藻の一種であり、海洋表層から有光層下部まで、さまざまな光環境下で生息する。

[4] 持続可能な開発目標(SDGs)
2015年9月の国连サミットで採択された「持続可能な开発のためのアジェンダ」にて记载された2016年から2030年までの国际目标。持続可能な世界を実现するための17のゴール、169のターゲットから构成され、発展途上国だけでなく、先进国自身が取り组むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても积极的に取り组んでいる(外务省ホームページから一部改変して転载)。

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?理学部生命科学科 成川 礼(ナリカワ レイ)准教授

报道発表資料(794KB)