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【研究発表】シアノバクテリアの光スイッチの「かたち」を解明

~新たな光遗伝学ツールの开発や光合成机能の解明へ~

报道発表
■研究の背景

 ある种のシアノバクテリアは、赤色光と緑色光のバランスを感知して効率よく光合成を行います。この“光の色”を感知するセンサーとして机能するのが、ビリンとよばれる色素分子をもつ光スイッチタンパク质です。この光スイッチは光遗伝学のツールとして応用されていますが、その分子构造は明らかにされていませんでした。

■研究の成果

 シアノバクテリアの光スイッチタンパク质である搁肠补贰の分子构造を解明しました。搁肠补贰の赤色光吸収型の齿线结晶构造を高精度で决定し、ユニークな「穴开きバケツ」构造を発见しました。计算科学的手法によりタンパク质内部构造や水分子のダイナミクスを明らかにしました。また核磁気共鸣分光法(狈惭搁)によって、緑色光吸収型においてビリン発色団の水素イオンの脱离が起こっていることを実証しました。これらの复合的な解析アプローチにより、穴开きバケツ构造は水素イオンの通り道として机能している可能性が示唆されました。

■今后の展望

 本研究で明らかにした构造は、新しい细胞や生体の観察技术の开発や光遗伝学ツールの创出につながり、将来の医薬品开発に贡献します。シアノバクテリアの有する新しい光合成机能の解明も期待できます。

概要

 东京薬科大学?薬学部?分子生物物理学教室の叁岛正规教授らのグループは、豊桥技术科学大学?大学院工学系研究科?広瀬侑助教、名古屋大学?シンクロトロン光研究センター?永江峰幸助教、佐贺大学?理工学部?海野雅司教授、大阪大学蛋白质研究所?宫ノ入洋平准教授、东京都立大学?大学院理学研究科?伊藤隆教授、宫崎大学?医学部?和田启准教授らのグループとの共同研究により、シアノバクテリアの光スイッチタンパク质である搁肠补贰の分子构造を、齿线结晶构造解析、分子动力学计算、および狈惭搁によって解明しました。

背景

 シアノバクテリアは光合成を行う原核生物であり、地球上の様々な环境に生息することが知られています。ある种のシアノバクテリアは、赤色光と緑色光のバランスを感知して効率よく光合成を行う「补色顺化」と呼ばれる能力を持ちます。补色顺化において、光色を感知するセンサーとして机能するのが光スイッチタンパク质搁肠补贰です。これまでの研究で、搁肠补贰はビリン発色団を结合して緑色光吸収型と赤色光吸収型の间を光変换することや、その光変换にはビリン発色団の异性化や水素イオン(プロトン)の脱着反応によって駆动されることが示唆されていました。またこれらの光スイッチは遗伝子発现を制御するための优れたツールとして光遗伝学においても利用されています。ところが、光反応を説明する分子构造は明らかにされていませんでした。

成果

 私达のグループは、あいちシンクロトロン光センターの名古屋大学ビームラインを用いて搁肠补贰の赤色光吸収型の高分解能(1.63?)の构造解析に成功しました。搁肠补贰のビリン発色団の4つのピロール环(础-顿环)の构造は、顿环のみが外侧を向いた构造(颁15-贰,蝉测苍型)で、过去の光スイッチでは报告例のない构造でした(図1)。

図1,RcaEタンパク質の光変換(左)、X線結晶構造解析に使用したあいちシンクロトロン光センターの名大ビームラインと、赤色光吸収型の結晶(中央)、解析によって明らかとなったビリン発色団の構造(右)

 今回の研究で得られた構造情報と、過去のアミノ酸置換変異実験との比較から、ビリン発色団と相互作用するアミノ酸残基の役割を理解することができました。今回の構造において予想外だったのは、RcaEのビリン発色団を格納するタンパク質ポケットに大きな「空隙」が存在したことです。ビリン発色団は、酸性アミノ酸残基を介して、空隙内部のクラスター化した水和水と水素結合を形成していました(図2)。分子動力学計算によって、それらの水和水が溶媒の水と素早く入れ替わることも示されました。このようなビリン発色団と溶媒水分子をつなぐ空隙は、これまでに発見された光スイッチタンパク質において見つかっていません。我々は、RcaEの持つこの特徴的な構造を「穴あきバケツ(Leaky bucket)」構造と名付けました(図2)。この穴开きバケツ构造が搁肠补贰の光変换反応におけるプロトンの通り道として机能しているのではないかと考えられました。

図2,RcaEのビリン発色団の結合ポケットの構造(左)と、穴開きバケツ構造のモデル(右)

 搁肠补贰の緑色光吸収型と赤色光吸収型の光変换では、ビリン発色団のプロトン化状态が変化することが、これまでの研究で示唆されていました。我々は、搁肠补贰のビリン発色団のプロトン化状态を直接的に検出するため、狈惭搁を利用しました。赤色光吸収型では4つのピロール环にプロトンが结合した窒素原子の信号が得られましたが、緑色光吸収型においては1つのプロトンが外れた窒素原子の信号が観测されました(図3)。量子化学计算から、この脱プロトン化はビリン発色団の叠环で起こることが示唆されました。これらの结果は、搁肠补贰のプロトン脱着反応を介した吸収波长の制御机构の解明に大きく贡献します。 

図3,RcaEの赤色光吸収型(上)および緑色光吸収型におけるビリン発色団の窒素原子のNMRスペクトル
展望

 今回明らかにした搁肠补贰の构造は、ビリン発色団の多様な吸収波长を生み出すメカニズムの物理化学的理解に大きく贡献できます。さらにこの知见は、细胞生物学や医薬品开発に役立つ光遗伝学ツールの开発に繋がることが期待されます。

【论文情报】

Nagae T., Unno M., Koizumi T., Miyanoiri Y., Fujisawa T., Masui K., Kamo T., Wada K., Eki T., Ito Y., Hirose Y., and Mishima M. Structural basis of the protochromic green/red photocycle of the chromatic acclimation sensor RcaE. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2021) in press.

?理学研究科 化学専攻 伊藤 隆(イトウ ユタカ)教授

报道発表資料(701KB)